王様と私のただならぬ関係
よし、こんなもんかな。
給湯室を片付けていた明日香は仕事を終えて、伸びをした。
さあ、早く帰って寝るか。
研修中はまだ緊張しっぱなしなので、三倍は疲れる。
思わず、緋沙子に、
「何処で手を抜いたらいいのか、まだわからないんですよねー」
と言って、
「……手を抜くとこなんて何処にもないわよ」
いい度胸の新人ね、と低い声で言われてしまった。
いやいやいや。
人間気合いを入れすぎると失敗するじゃないですか、と苦笑いして誤魔化したのだが。
「明日香」
狭い給湯室に、よく響く低い声がした。
振り向くと、案の定、大地が立っていた。
身体の大きな彼が入り口に立つと、狭い戸口いっぱいいっぱいで、戸が閉まっていないのに、閉じ込められているかのように感じてしまう。