王様と私のただならぬ関係
「お前、うちの会社に入ったんだったんだな」

 ええ。
 まさか、貴方様がいらっしゃるとは知りませんで。

「もしかして、俺を追ってきてくれたのか?」

 ひゃっ、100%違いますよっ。

「奇遇だな。
 俺もお前が忘れられなかったんだ」
と言いながら、大地は肉厚な手で明日香の手を握ってくる。

 いつかの出来事を思い出し、明日香は恐怖で動けなくなる。

 いつかの出来事とは、この男のせいで、危うく刑務所に入ることになるところだった出来事だ。

「明日香」

「あ、あのー、如月さん。
 上司の方の勧めで、結婚話が進んでいると緋沙子さんに伺いましたが」

「いや、それは勝手に進んでいるだけだ。
 断らなかったら、どんどん話が進んでいる」

 この人も相変わらず、アバウトだなー、と思いながら聞いていた。

 こんな脳みそが筋肉な状態でよく仕事出来てるな、と思ってしまう。

 しかも、営業のようだが。

「お前が俺のところに戻ってきてくれるのなら、その話は断る」
と大地は言い出す。
< 12 / 298 >

この作品をシェア

pagetop