王様と私のただならぬ関係
 秀人は自分に気づくと、
「ボールペン……」
と言いかけた。

 その手は備品伝票を突き出している。

 いや、お前も状況を読め、と彫像のようなキング様に向かって思ってしまった。

 どうやら、総務にボールペンを取りに来らされたようだ。

 上司にキングと揶揄(やゆ)されていても、まだ入って二年のぺーぺーの社員だ。

「待て、明日香」

 思わず、外に逃げようとした明日香を大地の手が追ってくる。

 一度捕まったら、逃げられないような手だ。

 殺されるっ、と勝手に思いながら、なんとなく、秀人の後ろに逃げていた。

「退け、葉月。
 明日香は俺と結婚するんだ」

 ……なんだろう。
 また話が飛んでいる。

 悪い人ではないのだが。
 頭の中で勝手に話が進む傾向があるというか。

「何故逃げる、明日香。
 誰も相手が居ないのなら、やり直そうじゃないか」
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