王様と私のただならぬ関係
 いやいやいやいや。

 待って。

 前から突っ込もうと思っていたんですけど、如月先輩っ。

 私は、先輩と付き合った覚えも別れた覚えもないんですけどっ、と大地に手を握られたまま、明日香は固まる。

 先輩の頭の中ではなにが起こっているんですかっ。

 ある日、別の先輩から、自分が大地と付き合って別れたと聞かされて驚いたくらいだ。

「お前が俺のところに戻ってきてくれるのなら、俺は見合いの話は断る」

 断らないでっ、と思いながら、救いを求めて、周囲に視線を巡らせたとき、大地の巨体の隙間からそれが見えたのは、彼もまた、大地並に背が高かったからだろう。

「は、はは、葉月さんっ」

 なんで、この人、こっちの棟に居るんだ、と思いながら、思わず、呼び止める。

 あれはポスターですか?

 いいえ、ポスターではありません。

 という中学一年生の英会話のような関係しかない男だったが、なんとなくその名を呼んでいた。

「葉月?」
と大地が振り返る。
< 13 / 298 >

この作品をシェア

pagetop