王様と私のただならぬ関係
 


 もう寝よう……と思いながら、明日香はトボトボ戸締りをする。

 玄関まで来たとき、足を止め、じっと開かない扉を見つめてしまった。

 恋愛ってこういうものなんだなあ、と初めての経験にしみじみと思う。

 いつも頭の九割を葉月さんが占めている。

 いや、仕事のことも考えて……と緋沙子に言われそうだが。

 葉月さんは、頭のほとんどが仕事っぽいなあ。

 あとはクラゲのことかな。

 あ、それと、ちょっぴり、明日香のことも。

 私じゃなくて、こっちの、とスイスイ泳いでいる明日香を見つめる。

 ……確かに太ってきたな、と思いながら。

 秀人を殺(や)り、秋成くんたちを喰らって、巨大化の一途をたどっている。

 この図太さがいっそ、うらやましいな、と思って眺めていた。

 葉月さん、貴方の頭の何処かに私は居ますか?

 ひょこっとクラゲの陰からでも顔を出してはいませんか?

 水槽の片隅に、小さな自分がちんまり顔を出したものの、上下するクラゲに弾き飛ばされて、結局、秀人の視界には入らない、というところまで妄想したところで、

 ……なんかむなしくなってきたな、寝よう、と思う。
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