王様と私のただならぬ関係
 今日はちょっと時間が早いようだ。

 廊下に、人通りもあるだろう。

 早く開けなければ、誰かに見つかって、葉月さんが通報されてしまうのではっ。

 そんなことを思いながら、慌てて開けると、白い仮面の男が花を突き出してきた。

 鉢だ。

 淡いピンクの花が咲いている。

 シ、シクラメンだーっ!

 しかも、鉢植えっ。

 いや、見舞いじゃないから、いいのか。

「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」
と言って、さっき急いでつかんだ、下駄箱の上の本を手に後ろを向く。

 なにが来てもいいように、会社の図書室でポケット花図鑑を借りてきていたのだ。

 シクラメン、別名、豚の饅頭。

 ……豚の饅頭!?

 い、いや、問題は、花言葉だ。

 花言葉……

 えーと。

 赤だと嫉妬。

 白だと清純。

 ピンクだと……はにかみ。
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