漆黒が隠す涙の雫
こんなんで帰ってきて…と言うのが、虫の良い話過ぎたのか……。


だけど、それを知った所で、私にはもう何も出来ないじゃないか……。


「黒鷺【くろさぎ】っていう、全国でもトップを争う暴走族がある」


「くろ…さぎ?」


「そう。俺らの世界では有名なヤツらで、“族狩り”だけで上まで上り詰めた厄介なヤツらなんだ。

族狩りっていうのは、言葉の通り“族を狩る”。暴走族グループを再起不能にするのを楽しんでるようなヤツらの事だよ」


「そ、そんな人達が、お兄ちゃんとどう関係してるの…?」


潤くんは、一度私の顔をじっと見つめると、ゆっくりと口を動かした。


「菅野武」


その言葉に反応するように、私の心臓ががドクンと跳ねる。



「菅野武は、そのグループの現総長の名前だよ」



潤くんのその言葉で、ようやく全てがつながった気がした。


お兄ちゃんの復讐の意味も……。


左腕の傷が疼き出す。



菅野武。



私をこんな風な体にした張本人––––。



「新は、そのグループを滅ぼそうとしてる」



体が震える。


息を上手く吸うことが出来ない。



「相手は全国レベルの暴走族だ。しかも、族狩りを得意とするヤツら。雷無なんてひとたまりもない。片手で捻り潰されてお終いだよ」
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