漆黒が隠す涙の雫

お兄ちゃん……。


何を考えてるの?


「捻り潰されるくらいならまだいい。最悪の場合、命だって保証は出来ない」


「……っそんなのダメッ!!!!」


潤くんにすがるように、その腕を掴む私。


「そんなの嫌だよ…っ。お願いっ…お兄ちゃんを…お兄ちゃんを助けて……っ」


潤くんの手が、潤くんの腕を掴む私の手をそっと剥がす。


そして、私の震える手を掴んだまま、真っ直ぐと落ちてくる潤くんの視線はどこか悲しそう。


「俺は愛華の嫌いな暴走族だよ?」


「……っ」


「そんな俺を信じられるの?」


潤くんはそれだけ言うと、私に背を向け、幹部室を出て行ってしまった。



そうだよね。


何やってるんだろう私。


自分でもあまりに都合がいいと思う。


頼ったり、疑ったり、そしてまた頼ったり。


自分で自分のフラフラしている感情が気持ち悪い。


潤くんが腹を立ててもおかしくないよね。


潤くんは、“暴走族”というだけで嫌悪を抱いている私をとっくに見透かしていたんだ。


本当に何をやってるんだろう。私は……。





「へぇ!めっずらしーね!潤があんな風に感情を露わにするの!」


淀んだ空気の幹部室に修二くんの明るい声が射す。
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