たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「本来なら私が届けなくてはならないのだが、これから用事があって行けないんだよ」


フィーアは不安の表情を浮かべた。


「大丈夫だよ。フィーアはどこから見ても立派なベーゼンドルフ家の侍女だ。堂々としていれば問題ないさ」

自信を持ちなさいとばかりに、口角を上げてコンラートは笑う。


コンラートさんが私に微笑んでる。今まで難しい顔ばかりだったのに。フィーアの心は無性に弾んだ。


コンラートに褒められてフィーアは顔をほころばせると、書類が入った皮の封筒を受け取る。


「それから.....」コンラートは胸ポケットから金色に光る小さな六角形のキーホルダーのような物を取り出した。


「これはお城を通るときの通行証だ」

よく見ると、カールリンゲンの国章が刻まれている。

「大切なものだからくれぐれも無くさないように」


「はい。行ってまいります」

フィーアはそれ受け取りポケットにしまうと、頭を下げて行こうとした。
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