たとえこの身が焼かれてもお前を愛す
「もし馬に乗れるなら使いなさい。ご主人様も急いでおられるだろうから」

思いがけない言葉だった。

乗馬が出来る?!フィーアの心は踊り、顔は花が咲いたように明るくなった。

馬に乗るのは久しぶりだ。


趣味の多いフィーアだったが、乗馬は特に好きだった。

子供の頃から慣れ親しんでいたし、貴婦人の中では自分が一番上手に乗りこなせると自負している。


風を感じて野山を走る爽快感。

キツネと競争したり、鷹を追いかけたり。

子供の頃は、張り切りすぎて、お供の人たちを振り切ってしまったほどだ。

振り向いた時には誰もいなくて、後で教育係のアルベルタに怒られたっけ。

記憶の一辺が鮮やかによみがえる。


馬番のカールから一頭借りると、「はっ」手綱を軽く馬の背に叩く。


”ヒヒーン”軽くいななくと軽快に走り出した。


大地を蹴るひずめの音はフィーアの呼吸と呼応し、全身を包む風は重力を忘れさせる。


何とも言えない高揚感。


フィーアはエルンストを思い浮かべていた。

一緒に草原を頭を並べて走れたら、どんなに楽しいことか!

でも、競争は負けないわ。

ああ、一度でいいからご一緒してみたい。

無理とは分かっていてもついつい想像してしまうフィーアだった。
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