イジワル副社長の溺愛にタジタジです
彼はやっとドゥシャインのカウンターに向かった。

どうして私に試させたりしたんだろう。

自社製品でない化粧品を使っているのに、カウンターにいるのはいたたまれない。
お客さまから『この色が欲しい』と自分の使っている商品を指定されることもあるからだ。


「こんにちは」


昼間のこの時間は、化粧品フロアの客も少ない。
レストラン街がにぎわっている頃だ。

ドゥシャインのカウンターには客がいなくてホッとした。


「副社長!」


カウンターの責任者が目を輝かせる。

ここにはもう何度も顔を出している。
副社長に就任してたった半年なのに、お目当ての女性がいるのではないかと思うほど足しげく通っている。


「こんにちは。調子はどうですか?」


彼はそんな曖昧に質問をしながら、さりげなくディスプレイを直し始めた。


「はい。単月ですと前年を上回りそうです」

「頑張ってるね」


売り上げのことは、わざわざ聞かなくても知っているはずなのに。


「ありがとうございます」


それでも副社長という立場の人に褒められるとうれしいものだ。
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