イジワル副社長の溺愛にタジタジです
「まったく、あの人が来てからこんなことばかりだよ」

「次期社長って、ただの親の七光りだろ? このままじゃドゥシャインを潰すぞ」


そんなのあんまりだ。
実際、商品開発の詰めが甘いのはたしかだし、マーケがなかなか重い腰を上げないから本城さんが自ら動いたのに。

腹が立ってひと言言い返したいとドアに手をかけると……。


「いいから。無能なヤツは放っておけ」


先を歩いていったはずの本城さんが戻ってきて私の手を止めた。


「うしろを振り向いたらいないから、こけているのかと思ったぞ」

「なにもないところで転びません!」


私が反論すると、ククッと笑った彼が再び歩きだしたのでついていく。


「本城さん、悔しくないんですか?」

「なにが?」

「だって……。いえ、なんでもありません……」


そこまで言ってしまってから、もしかして彼には聞こえていなかったのかもしれないと思い、口をつぐんだ。


「親の七光りには間違いないから。でも、このままじゃこの会社潰れるな」


聞こえてたんだ……。
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