イジワル副社長の溺愛にタジタジです
それなのに、余裕の笑みを浮かべる彼は、長い足をスタスタと動かしてどんどん離れていく。
足の長さが全然足りない私は、小走りにならないと彼についていけない。


「わっ……」


重役フロアまで行ったところで、足をひねって転んでしまった。


「ほら、言った通りだろ」


もう副社長室の前まで行っていた彼が、気づいて戻ってきてくれた。

あんなに啖呵を切ったのに、彼が言った通り転んでしまった私は、情けないやら恥ずかしいやらで顔を上げられない。


「困ったお嬢さんだ」


本城さんは呆れ顔をして私の前にしゃがみ込んだ。


「これ、もうダメだな」


彼が手にしたパンプスは、ポキッとヒールが折れてしまっている。


「あ……。お金ないのに……」


短大を卒業して四年間、百貨店のカウンター業務ひと筋だった私は、半年前、本城さんが副社長に就任したのと同時に、なぜか秘書を命じられ今がある。

それまでは制服が支給されていたので困らなかったけれど、秘書となると別。
スーツやパンプスを日替わりで着用できるようにいくつもそろえた。

だから、金欠になってしまった。
< 7 / 33 >

この作品をシェア

pagetop