イジワル副社長の溺愛にタジタジです
でも、パンプスがダメになってしまったから、こうして気を遣ってくれていることだけはわかった。
目立つので、裸足で歩いたほうがよかったような気もするけれど……。

それにしても私を軽々と抱き上げるなんて、相当な力の持ち主だ。

私は抵抗虚しくそのまま副社長室に連れていかれた。
そして、私をソファに下ろした彼は自分のデスクからなにかを取り出し、私のパンプスのかかとをじっと見つめる。


「これじゃ無理か……」


彼が手にしていたのは木工用ボンドだった。
修理してくれようとしているの?


「あ、あのっ、私やりますから」

「うーん、瞬間接着剤のほうがいいよな。でも、今はないし」


彼は私の声なんて聞こえなかったかのように、ひとりで悩みだす。


「これは修理に出します。かなり歩きましたし、仕方ありません」


秘書の仕事はデスクワークが多いと思っていたのは大間違いだった。


本城さんに指示され、会社中を走り回っていることも多い。
それに、フットワークのいい彼は、時間があればすぐに売場に顔を出しに行くと言いだして、いつも同行している。

だから、百貨店のカウンターにいたときよりずっと歩いている。
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