あの日から、ずっと……
仕事
 会社全体の年に一回行われる、大掛かりな飲み会が行われた。

 新人歓迎会やら、送別会だか、昇進祝いだかが全て一緒に行われ、中では誕生日を主張している社員までいる。

 私は、新人挨拶のお酌まわりに追われていた。


 お酒は好きだが、飲み過ぎないようにとセーブしながら口にする。

 出荷部の辺りに行くと……


「やっと来た。宇佐美芽衣ちゃんでーす」

 上機嫌で井口さんが皆に私を紹介してくれた。


「なんだよ! 井口もう目つけてんのか?」

 出荷部の男性社員がブーブー言い出した。


「そうだよね、芽衣ちゃん!」

「い…… いえ……」

 口ごもる私に、井口さんからビールの入ったコップを渡たされ、思わず飲み干してしまった。


「へえ―。結構飲めるんだ」

 井口さんや周りの人にも勧められ、そのままその席から動けなくなってしまった。




 そのまま二次会へとなり、半分以上の人が帰り、いくつかのグループに分かれた。

 私は浅井先輩達に付いたのだが、井口さんや、そして泰知、立花さん達とも一緒になってしまった。


 仕方なく、泰知と立花さんから離れ、浅井先輩の横に座った。

 しかし、その横に井口さんが座わり、井口さんは話も上手で盛り上げ役の人だ……

 泰知兄ちゃんが気になってチラッと見ると、立花さんがピタリとくっついている……

 軽くため息が漏れる……


「どうしたの?」

 浅井先輩に又心配をかけてしまった。

「飲み過ぎたみたいです」

「そう?」

「大丈夫か宇佐美? 俺が送ってやるぞ!」

 上原主任が、嬉しそうに私の方をニヤリと見た。


「主任は私を送る事になってるでしょ!」

 浅井先輩が、ジロっと主任を睨んだ……


 私は、なんだかこの人達お似合いだなぁと思って、クスっと笑ってしまい、二人に怪訝な顔をされてしまった。



 二次会が終わり外へ出ると、タクシーに乗りあ合うメンバーを決めていた。

 私は歩いても十五分もかからないので、歩いて帰る事にした。


 泰知はどうするのか?と、ちらっと見ると立花さんが、泰知の腕をガシっと組んでいた……


「宇佐美どうする?」

 井口さんの声に我に返った。

「あっ。歩いて帰れるので……」


「いや、もう遅いし…… 送るよ……」


「いえっ…… 本当に近いんで……」


「それか…… もう一軒どう?」


「すみません…… あまり遅くなると、お爺ちゃんが心配するので……」

 それは、本当の事だ。さっき、帰る電話をしたところだ……


「そっか…… それなら仕方ないな……」


「すみません」

 私は頭を下げ、ほっとしたのが自分でも分かった。


「そんなに、吉川主任が気になる?」

「えっ?」

「嫌、別に……」

 井口さんはふっと笑うと、手を振って行ってしまった。


 もう一度、泰知に目を向けると、皆と少し離れたところで立花さんと何か話をしている姿があった。


 浅井先輩と上原主任に挨拶をすると、私はそっとその場を後にした。


 井口さんが、泰知の方へ歩いて行く姿とすれ違った。

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