あの日から、ずっと……
 芽衣は引っ越しの朝、父の運転する車の助手席に乗った。
 後部座席には、母とチャイルドシートに弟が乗っている。


 爺ちゃんと婆ちゃんが、淋しそうに見送る姿を後に、車は走り出した。



 泰知の家の前へ近づくと、泰知を中心に近所の子供達が手を振って立っていた……

 芽衣は車の窓から身を乗り出し、大きく手を振った。


 泰知が道路まで出てきて、ずっと両手を大きく振っていた……




 あれから、十三年…… 私は、泰知兄ちゃんの家の前から止まっていた足を動かせた……




 二年前に日本に戻って来たのだが、そのまま横浜の短大に進学し、この四月に就職した。
 大手の船の部品メーカーの会社で、この町に工場がある事が私の就職の決めてとなった。
 この町の工場の勤務を希望すると、二か月の研修を受け、この町に勤務先が決まったのだ。



「芽衣ちゃん!」


 私の歩く先から、大きな声で呼び手を振る姿が見えた。


「爺ちゃん!」

 私は、スーツケースを転がせて走りだした。


「芽衣ちゃん、大人になって…… さあ、早く婆ちゃんも待っているぞ!」


 爺ちゃんは嬉しそうに、私の手を引いて家の中へと向かった。
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