ヒトツバタゴ
いつも女子会の前日には嬉しそうに「明日女子会なの」って報告があるのに今回は何も聞いていなかった
だいぶ俺を意識してくれてんのかなーなんて思いながら吉野さんの料理には遠く及ばないファミレスの料理を口に運ぶ
毎朝同じ通勤電車の吉野さんに見えるようにさつきとの距離も近くしてたし、今日の女子会もその情報が回っての招集かもな
吉野さんなら俺が吉野さんと電車が同じと知っていることを知ってそうだしな
それなら今回の女子会でさつきの気持ちに変化があったらいいななんて淡い期待をしながら家路につく
毎回女子会の帰りに吉野さんの料理をお裾分けで持ってきてくれるのを今日も家で待っていたが、俺の家のチャイムが鳴ることなく週は明けた
「なぁさつき、土曜日俺待ってたんだけど…」
朝の通勤電車で日常となった距離でさつきに言う
「え?何が?」ととぼけるさつきに「吉野さんの料理」と答える
本当はさつきを待ってたんだ
俺のテリトリーにさつきが警戒感もなく存在する時間が好きなんだ
でも来なかったってことはさつきの心の中で変化があったのだと思いたい