【完】恋愛事情
「…っ、も、もう…びっくりしたなぁ…」
あはは、と軽く笑い飛ばして、ほんの少し…分からないくらい、ほんの少しだけ距離を作った。
あくまでもさりげなく。
それが、今のあたしに出来る唯一の抵抗だった。
「はな?…あのな…?」
「ん?なぁに?」
「ほんまに、大好き、やで?」
そんなあたしに気付いているのか、いないのか…ほんの一瞬だけ真面目な顔をして、そう呟かれて。
それに対してあたしが何か言いかけ様と口を開き掛けた瞬間。
「お。もうすぐはなの家の道やな。いっつも、ちゃんと送らんとかんにんな?…じゃあ、ここで…」
「あ、うん…」
「はな、また明日な?」
「…うん、また明日ね…」
そう言って、少し足早に去っていく裕の後姿を、あたしは暫く見つめてた。