【短編】生け贄と愛
***

 泊まるということでロゼに風呂の場所や貸す部屋を教え、家の中を案内してから、シルヴェスタはもう一度ソファに座った。

ふう、と一息ついてからすっかり冷めてしまった紅茶に口をつける。


真っ赤な髪の少女。

珍しい拾い物をしたものだ。


シルヴェスタの住む町で赤はタブーだ。

彼自身は血が身近にあるのでそれに染まることはないが、この辺りの赤嫌いは極めつけだ。


そんな町で今まで暮らしてきて、よく生きていたなと感心する。


しかし、あの女も馬鹿だなと彼はまた冷たい目をする。

アメジストの瞳に氷のような凍てついた光が宿った。

こちらが甘い顔をすれば、すぐに心を許してしまう。


また、気になることもいくつかあった。


あの血の香り。容姿の美しさ。聡明さ。


どこか人間離れしているから、酷い扱いを受けてきたのだろう。


「愛されたい、か」


必死な顔で彼女が口にした言葉。

少し自分と似ている点を見つけたようで、シルヴェスタは顔をしかめる。


獲物は獲物。

情に流されて自分の身を危うくするほど、自分は馬鹿ではない。

己に言い聞かせるように心の中で唱えてから、シルヴェスタはゆっくりと席を立った。





< 16 / 53 >

この作品をシェア

pagetop