春が来たら、桜の花びら降らせてね

「はぁっ、はっ……くっ」

夏樹君が目の前のコース通るその一瞬、私を見た気がした。

その瞳が大丈夫だと言っているようで、私の中の不安が一瞬にして消え去る。

そうだ、君なら大丈夫。
向かい風すら追い風に変えて、きっと君は約束のために1位でゴールするのだろう、そう信じられた。

そして、運命の時が来る。
その場にいたすべての人間の緊張が、最大限に達したゴールまでの一直線。

ほんの数メートル差、夏樹君は最後の追い上げを見せて、先にゴールテープを切った。

「おぉぉぉぉっ!」

「佐伯ナイスー!」

「A組優勝じゃん!」

クラス対抗リレーの配点は高く、他の競技でも高得点をとっていたA組は、これで体育祭優勝が決定した。

鳴りやまない歓声の中、夏樹君と琉生君が一緒に観客席へと戻って来る。

「やっぱ、スポーツで夏樹には勝てないな」

「琉生だって、足すげー早いだろ」

一緒に汗を流したからか、2人の表情は晴れやかだった。

ふたりがいつも通りで、私はホッと胸をなでおろした。

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