春が来たら、桜の花びら降らせてね

「胸が、あったかい……」

両手で胸をそっと押さえると、瞳を閉じる。

「優しさは私の呪いまで解いちゃうんだね」

「呪い?」

聞き返した夏樹君に、私は苦笑いで頷く。

「そう、喋れない呪い」

喋れないことをずっと、私は神様にかけられた呪いのように思っていた。

「でもきっと、神様は知ってほしかったんだ」

これは、私に与えられた試練だったんだろう。

「人は一人では生きていけないんだよって」

「冬菜……」

「みんなと出会ったから、もっと話したい、自分のことを知ってほしい、変わりたいと思った」

孤独でも生きていけるといけると思っていた私に、変わるための一歩を踏み出す勇気をくれた。

そう、あの暗闇の世界も、付き纏う孤独も、全て自分自身が作り出していた闇だ。

いつだって、心に信じられる人、信念、想い……。

なにか一つでもあれば、その光を頼りに抜け出せるのだ。

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