春が来たら、桜の花びら降らせてね
「冬菜……悪いな」
ポンッと、夏樹君は私の頭に手を乗せる。
たぶん、私が気を遣って声をかけようとしたんだと、思ってる。
そうじゃないのに、ただ夏樹君を想っての行動なのに、伝わってない。
こういう時、話せないことがもどかしくてたまらなくなる。
「夏樹、今日のクラス対抗リレーお前も出るんだろう?」
「あぁ、琉生もだろ」
夏樹君は帰宅部だが、陸上部にも負けず劣らずで一番足が速い。
陸上部に誘われてはいたらしいけれど、バイトがあるからと断ったという話を、前に本人から聞いたことがあった。
「なら……冬菜ちゃん」
琉生君が突然こちらを振り向き、目線を合わせるように屈んで見つめてくる。
距離が近くて、思わず体が強張った。
なんでだろう、相手が夏樹君じゃないからなのか、緊張感が膨れ上がり、金縛りみたいに体が硬直していく。
琉生君……?
急に真剣な顔をして、琉生君の様子がいつもと違うことは私にもわかった。
だからか、余計に不安になり、またキュッと喉が絞まる。