素直になるのはキミにだけ
「勝利の女神様のおまじない」




そう言ってニッと笑った秋本は、そのままあたしとこぶしをコツンとぶつけた。




なんだ、そういうことか…




「……がんばって」




“ 勝て ” とか、 “ 負けないで ” とかはいわない。




でも、そのかわり…先輩たちとの最後の試合を、精一杯楽しんできてほしい。




「先輩の声、めっちゃ聞いてるから」


「…っばか、集中しなさい」




ふいに秋本はあたしの頭をポンッと優しくたたいて、コートへ入っていった。





……その手は、なぜかとてもあたたかった。

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