私の二人の神様へ
「言ったら、怒るし呆れられるからやだ」
「怒ることなのかよ?わかった。例え、怒る内容でも一発殴って許してやる」
「殴られるのに言うわけないでしょ!?」
「言わなかったり、嘘吐いたら、五倍の制裁だ」
本をぱん、っと榊田君は閉じる
「五倍って。五回殴られるの?」
それでも、言うよりマシなような気がする。
「いや。三回殴って、二週間無視する」
「えっ!?」
私はクッションを床に押し付けた。
敵は何が一番私に堪えるのか知っているようだ。
「それ五倍じゃないよ!!」
「なら早く言え」
再度、クッションを抱え鼻までを覆い隠す。
「本当に一発殴るだけ?何言っても?もう無視されるのやだ」
「俺はお前との約束は守る。早く言え」
言うしか私には道はない。
けれど、恥ずかしいし呆れられる。
「言わないとダメ?榊田君、絶対無神経だって呆れちゃう」
「水野。早く言わないと五倍の制裁だ」
イライラしながら床を指で叩く榊田君に意を決した。
でも、口を開いては躊躇い、クッションを口に押し付けるの繰り返し。
だんだんと、榊田君の床を叩く音が速くなる。
榊田君の苛立ちが頂点に達し、口を開こうとするのがわかったから、私はぼそりと言った。
「……キスして欲しいな…って思ったの」
言い終わったらクッションで鼻先まで隠し、熱くなった顔を隠す。
「…………」
榊田君は表情を変えずに無言で私を見つめた。