私の二人の神様へ
「……水野。この間言ったこと忘れたのか?煽るようなマネは」
榊田君の言葉を途中で遮って、彼に触れるだけのキスをした。
私からキスするなんて初めてのことだったから、これが精一杯。
こんなお子さまのキスなんて、榊田君にとっては握手ぐらいのものだろうと思ったが、切れ長な目が今はまん丸。
つまり、これでもかというほど目を見開いていた。
今の私にはそれを物珍しく見ている余裕もなかったし、自分の気持ちを伝えたい一心でぎゅっと首に巻きつき、形の良い耳に口を寄せた。
「榊田君のものにしてください」
私がそう言うと、榊田君の息が十秒ほど止まり、次の瞬間激しくむせった。
何も飲んでもいないのに、げほっ、げほっ、と苦しそうに。
私は回していた腕が強過ぎただろうかと、離して彼の背中をさすった。
「だ、大丈夫?お水飲む?」
彼は咳き込みながら頷くから慌ててキッチンに走った。
榊田君は水を一気に飲み干すと、空咳をして落ち着きを取り戻した。
「ごめん。首強く締めすぎちゃった?」
「……水野。お前は自分が何言ったかわかってねぇだろ?」
絶対そうだ、と呟きながら咳で少し潤んでいる目で私を睨み付けた。