私の二人の神様へ
「う~ん。振るのは賛成できないな。今のままでとりあえず俊は満足してるよ。本当に」
「でも、このままではいられない」
「確かにね。いずれ恋人か、赤の他人かの選択を小春ちゃんはしないといけない。友達っていうのは無理だよ。俊、心が狭いから」
私は、思わずブランコを漕いでいた足を止めた。
地面に足が着き、踏ん張るが、勢いが止まらず、ズリズリと引き摺られる、お気に入りの靴なのに。
今はそんなことよりも広君の言葉にショックを受けた。
「やっぱり、友達は無理?時が経っても?」
私の顔を困ったように広君は見つめ返した。
「無理だよ。絶対に。だからせめて振るなら大学卒業してからにしない?」
榊田君に、嫌な思いをして欲しくないけど、私とはまったく無関係になってしまうのは嫌だ。
一年の頃のように、ただの友達に戻れることを期待していたけど、そんなのは夢物語でしかない。
居心地の良さに浸っていた間に、元に戻れないところまで来てしまった。
広君は冗談めかしに続けた。
「それに、何の拍子に幼馴染のこと吹っ切れるかわからないよ?次に会った時に吹っ切れるかもしれないし。俊をキープしておくのが得策」
来週、仁くんと会えば何か変わるだろうか。
迷いが吹っ切れて、しっかり選択できるのだろうか。
私は、ブランコで少し助走をつけて、地面へと飛び下りた。
「なら、来週まではキープしておこうかな」
広君のほうを向いて、私も冗談めかしに笑ってみせた。
「男から見ても俊はかなり格好良いよ?小春ちゃんを、ずっと大事にする。俺が保証するから、前向きに考えてやってよ」
私はそれには答えず、帰ろう、と広君に言って、買い物袋を持った。
すると、公園の入り口に榊田君の姿が。
機嫌悪そうに、私たちに歩み寄ってきた。
「遅い。腹減った。飯」
彼らしい、お迎えの言葉。
私と広君は顔を見合わせて、苦笑した。