私の二人の神様へ
コートを着て、仁くんのマフラーを巻く。
このマフラーは幼い自分を変えようと誓った時に彼が私に巻いてくれたものだ。
そのまま、私にくれた、私の宝物。
私のマフラーをあげるわけにもいかないから、結婚祝いと仁くんの誕生日を兼ねて今年の三月に同じような黒いマフラーをプレゼントした。
少し値が張ったけど一年このために少しずつ貯金してたから満足いくものが仁くんに手渡せた。
彼も、毎日付けてくれているだろう。
財布をコートの大き目のポケットに突っ込み、鏡で全身をチェック。
これはもう長年の習慣で、ちょっとした買い物でも身だしなみをしっかり整えてしまう。
自分にゴーサインを出し、最後に戸締りを確認。
チェーンとドアの鍵を外しドアを開こうとしたら、勢い良く勝手にドアが開いた。
開け放たれたドアから見えたのは白い息を吐いた榊田君だった。
唖然としたと同時に、榊田君が目の前にいて、思わず一歩身を引いた。
榊田君は時折、私といると苛立っている。
表情というより、彼の目に苛立ちが見て取れた。
今の榊田君の目にも同じものが映っていた。
だけど、今まで私が見て来たものよりも、ずっと深い憤りと苛立ちが瞳の中で蠢いている。
そんな彼を見て、やっぱり言葉が出てこなかった。
「……水野。お前は、凍死から救ってやった俺を凍死させるつもりか?」
まさか。
「もしかして、ずっとそこにいたの!?」
私の居留守に気づいて、ここで見張っていたのだろうか。
「お前の強情さに対抗するには、これしかない。というか、もう限界だ」
彼の唇は青い。
というか、全身青ざめているような気がしないでもない。
私も、彼とは違う意味で、青くなった。