浅葱色の忍
慶応2年  冬
慶喜が将軍に就任してすぐ

渋沢が、新選組を訪れた


幹部達が集められ、不機嫌な渋沢が
口を開く


「幹部ってこれだけ?」


「いえ、参謀と数名が留守です」


「山崎さんは?」


「ああ 今、使いに出してます」


「は?使い?」



渋沢の表情が険しくなった





「戻りました」

「入れ」



襖を開けた山崎に

渋沢が近づき、胸ぐらを摑もうとする



グイッ 


「イテッ!」


「痛くないだろ」


ふわりと投げ落としたのに
抗議の目を向けてくる渋沢に


「よくここにいるってわかったな」


「俺は、山崎さんのこと知りません!
でも、貴方は出会った頃から、俺を知ってるし、色々教えてくれた
不思議だなっとは、思っていました」


「そんなこと言いに来たの?」


「違います!!
慶喜様が将軍になられ、大変な時に
いなくなったから、気になって
梅沢殿に聞いたら、お辞めになったとか?
しかも、3年になるとか?」


「そうだけど」


「貴方のことを考えて、知ってることと言えば、土方沖田と知り合いだということ
だから!
ここで、幹部としているのかと…
参謀で、留守ならまだよかった!
何でお使いなんですか!?」


「何でだと思う?」


「質問しているのは、こちらです!」


「ふっ 俺のこと女顔した鬼とか言ってたクセに、随分と威勢が良いな
お前の頭なら、考えたらわかるだろ
渋沢のことは、出会う前から知ってたし
俺は、お前の前では
素性を隠したことはない
こうやって、問い詰めにくるだろうと
おおよその予想は、ついていた」


固まる渋沢をすり抜け
山崎が土方に跪くと書状を差し出した


「お騒がせして申し訳ありません
会津公よりお返事をお持ちしました」



その姿を見て

渋沢が目を見開いた




「わけわからない!慶喜様には
そんな話し方しなかった!
それに……」



言い掛けて、固まった



「山崎さん…… もしかして… 忍?」



幹部がクスクスと笑う




「渋沢さん!御名答です!」




沖田が元気よく、言った





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