浅葱色の忍

土方歳三

かっちゃんと総司が大阪へ向かう朝



2人の為に、握り飯と飲み水

総司には、好物の大福

かっちゃんには、烝華が愛用していた簪


山崎は、最期かってくらい

大袈裟に色々持たせていた


つーか、妹の色恋に興味なさそうだったのに、かっちゃんの気持ちはわかってたんだ


こんな時にも深雪の妹、かっちゃんの妾は
見送りに来ない


「怪我だの、病気だの
さっさと治して戻ってきてくれよ」


「はぁーい」


「心得たよ」


「山崎… そろそろ出立だ」


「はい 局長 沖田さん
いってらっしゃいませ」


「ぷっ」

「いってくるよ」


あまりにも硬い挨拶に
総司は、笑っていた


かっちゃんと総司が抜けた穴は、デカイ



「チッ やっぱ仇討ちしときゃ良かった」



時々、柄の悪い山崎に悩まされる

珍しく駄々っ子だったあの日

かっちゃんからどう説得されたのか

先ほどまで、さみしそうだったのに
コロコロと変わる奴だ



2人の輿が、見えなくなると


「あーあかん!さみしゅーて、泣きそう!」



今度は、さみしいらしい



「なんだ?山崎!親離れ出来ねえガキみたいなこと言ってんな?」


永倉と原田が、ニヤニヤと笑う



あぁ、始まるな……



「永倉!!恩を仇で返すな!慰めぇや!!」


「ヨシヨシ」


「んなぁっ!!子供か!!やめっ!!」


「やぁーい!ガキ!」


「待て-!!」




いい歳して…


年下に遊ばれている



本気で捕まえに行かないのは

山崎も楽しんでいるからだろう


バサッ




「イッテェ!」



永倉が振り回す手拭いが、俺に当たる




「てめぇら…… 待てごらぁーー!!」




いい歳した俺が、追いかけ回し
拳骨を落とすまで、いつもこの騒ぎが続く




笑って見ているかっちゃんと
俺に冷たい一言を言う総司が



ここにいないのが…




確かに、さみしい









〝それくらいにしたらどうだ?〟


〝土方さん、捕まえるの遅いですよ
歳ですか?〟







くっそぉ……




俺に新選組が守れるのかよ!!!







「副長? 何、変な顔してんねん!
隊士らが、気持ち悪いて逃げてくで?」




そうか、俺が不安な顔しちゃいけねえな




「るせぇよ!
遊ぶ元気あるなら、仕事手伝え!」


「ええよ!」






さり気なく、励まされちまったな






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