浅葱色の忍

山崎烝

急用があるからと
梅沢に呼ばれて、城に忍び込んだ


「良く来た」



用意された座布団に腰を下ろすと
梅沢を見る


一回り以上年上な梅沢から
弟のように可愛がられてきた


言葉遣いが悪くても
俺を甘やかしてくれた人



ことあるごとに、俺を怒鳴り拳骨を落とした平岡と違い



姫である時も気遣いをしてくれた



「急に呼び立ててすまんな…」



今だって、困っているのに
俺に詫びてから、話を始める



「戦が起こるやもしれん
大阪城におられる慶喜様が…
復権を考えているとかでな」


「確かなの?」


「ああ」


「そりゃ 攘夷派は、穏やかじゃないな」


「烝……すまない」



慶喜を導けなかったこと???
そんなの、梅沢のせいじゃないのに…


「梅沢、将軍に薦めたのは、俺だ
王政復古の大号令は、予想していた
対策を強化しておくべきだった
慶喜は、皆を守る為に復権すると言い出したんだろうが… 
戦になると思ってないんだろうな…
俺は、新選組として幕府についている
梅沢…大阪に行き、慶喜のそばにいてくれ
状況が悪化したら、すぐに慶喜を逃がせ」


「逃がせって…… 戦中に将軍をか?」


「立て直す為だ
それに… こちらが官軍であり続けるとは
限らない
下手に踏み込み過ぎれば、逆賊として
罪人扱いだ」



慶喜の事を梅沢に頼み
昔話をしたり、ゆっくりした



もう会えないかもしれない



戦になれば、あり得ることだ




「烝… 幸せか?」




別れ際 梅沢からの問いかけに


俺は、今までで1番の笑顔を見せたと思う





「うん!幸せだ!」











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