浅葱色の忍
江戸に来て1年


人の欲 陥れ うんざりした



子供ながらに

人の言葉を信じることが出来ず
人が怖いものだと感じた




あまりにもうんざりした俺は




近いものとしか話をしなくなった


「殿 参りましょう」



将軍 家慶様に呼ばれ城へ向かう途中




襲撃に合い、窮地に追い込まれた






籠の中でジッとしていると


「助かった 礼を言う」



梅沢の声に、乱闘が終わったのだと
ホッとした


「おい!大丈夫か?」


「こら!言葉に気をつけなさい!」


「構わぬ 助太刀ご苦労であった
其方 名は何という?」


「あ? 顔も知らねえ奴に名乗れるか?」


「無礼であろう!!」


「よい」



外にいる男がどんな男なのか
興味深く、外に出ることにした



「俺は、慶喜と呼ばれている」


「俺は…」「烝(ショウ)ーーーーー!!!」 



色白の男は、俺と同じくらいの年頃に見え
口の悪さに似合わず、綺麗な顔立ちだった

遠くから焦って駆け寄る男を指差す


「あれ親父」


「親子で旅をしているのか?」


「まあな」


「烝!!何をしている!!
約束の刻限に間に合わないだろう!?」


「はいはい
またな!慶喜!」


「ああ」





梅沢に声を掛けられるまで



親子の背中を見送った




俺にないもの…  




あのように、自由に旅が出来たら…




羨ましい想いと諦めの気持ち







徳川という家系故の重圧






ただ、烝ともっと話をしたかった



あいつは、俺がどんな立場のものでも


あのまま口悪く笑ってそうだ








そんな、友が欲しい










ひとりくらい








友が欲しい











< 195 / 264 >

この作品をシェア

pagetop