浅葱色の忍
その夜





久しぶりに烝華を俺の部屋に呼んだ


「今日、話をしていたのは、誰だ?」


「……そういえば、名前知らない」



メラメラと燃え上がっていた嫉妬心は
あっさりと鎮まる



「家定様が、烝華を誉めて下さった」


「お世辞だろ」


「……烝華、あの紅は
お前に似合うと思い、俺が選んでやった」


「そうなんだ!大事にする!」


「……気に入らなかったなら、そう言え!」


「いい色だと思った!
でも…」


「ほら!気に入らなかったんだろ!!」


「違う!!俺には、勿体ない!!
それに、普段使うとなくなるだろ!!」


「使う為にやったんだ!!」


「女らしくないから?」


「は?」


「ちゃんとしたときに使うから!!」


「どんなときだ?」


「うるさい!!」




気に入らなかったなら違う色をやるのに






しばらく2人して無言になっていると






「あのさ……
どうすればいい?どうすれば…

……抱いてくれる?」







烝華を見れば、真剣にこちらを見ていて
目がバチっと合う



まるで…


何か理由をくれと言っているようだった




「あの紅をつけてこいよ
そしたら、抱いてやる」



「本当?ちょっと待ってて!つけてくる!」


行こうとする烝華の腕を引き
懐におさめる


「なんだよ!急に! っ!!!」


抗議しようと上げた顔を片手で捕まえ

口づけをする

烝華が逃げないよう、後ろ頭を捕まえているが、逃げないどころか

ゆるゆると抱きついてきた



「優しくは、出来ないかもしれぬ」



そう言うと


コクンと頷く





いいのか?


本当に、いいのか?










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