浅葱色の忍

烝の喜び

家定様が将軍になられた頃


「子は、まだか?」



という催促が増えた









人に会うのが、憂鬱になった











呼ばれる回数は、減ったけど
呼ばれれば、営みはある




子ができにくい体質なのでは?
と、また、体中を調べられた




食欲がなくなると


「食わねえと、骨みたいな体じゃ
抱く気にならんぞ?」


平岡に、脅される









俺は、練習相手なんだろ?




子ができたら、どうなるんだ?




おかんに教えて貰った
心を落ち着かせる方法


鼻からたくさん息を吸い
青空を見ながら、ゆっくり口から吐く



毎月、月のものがくると体調不良になる









部屋で、休んでいると



「烝華」


「あ、梅沢」


「良い天気だね」


「そうですね」


「なのに、浮かない顔をしている
何か、悩み事かな?」


「いいえ 私に悩みなどありませんよ
いつも通りの体調不良です」



平岡に怒られるから
言葉遣いは、慶喜以外
全員に敬語を使うことにした




「慶喜様が御正室を迎えることになった」




「そう」



「色々と支度があるので
きっと、1年ほど後になるだろう」


「は?」


思わず は? とか言っちゃった


「私の時は、即日だったのに
御正室となると、1年も支度がいるのですね?」


「結納などの儀式があり
招待状や料理、衣装など…山積みだよ」



梅沢が、少し言いにくそうに





「御正室になられる方が、来月来るそうだ
その時に烝華にも会いたいと言っている」


「そうですか 楽しみですね!」


「大丈夫かい?」


「来月までしっかり作法を確認します」


「そうじゃなくて…」


「なに?」


「なんでもないよ」























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