浅葱色の忍
そこに阿部がやってきた


「烝華 そこら辺を散歩しておいで」



烝華は、ふらりと歩いていった



「おい… 慶喜様の側室に手を上げるとは
どういうつもりだ?」


「アイツが……」


「理由など聞いておらぬ!!!
美賀子様が同じ事をして
お前は、美賀子様を平手打ちするのか?
都合の良い時だけ側室扱いして
都合の悪い時は、乱暴に扱う」



阿部は、俺の方に向いた




「慶喜様
ご自分の御子の法要にも参られず
それで、大切にしているつもりですか?
烝華がどれだけの我慢をしているか
貴方は、考えもしない」


「俺にも立場がある!
正室を差し置くことも出来ぬ!」


「そうですか
でも、これだけは言わせてもらいます
御正室の子だけが、貴方の御子ですか?
烝華は、名前すらつけてもらえなかったと
笑っておりましたが
どれほど辛いことか…
本当なら…… 泣きたいだろうに
あの子は、泣きもしない
それを良いことに、甘えるのは辞めて下さい! 烝華も女です!」




名前……




法要……














「お気づき頂けましたか?
美賀子様と烝華に差をつけて
どれだけ蔑ろにしてきたか」







遠くで空を見る烝華に目を向ける







「母親に教えて貰ったまじないだそうです」




「まじない?」




「ああしてると、泣かなくてすむ
落ち着くそうですよ」







いつも





空を





空ばかり見ていたのは







辛い時だったのか













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