浅葱色の忍
山南さんとの別れに、皆が泣いた


山南さんだって

失ったものばかりじゃなかったはずだ

明里だっていたのに





「明里を巻きこみたくなかったんだろうね」





勇が言った



深い意味は、無いかもしれへんけど


なんだか、俺の闇に巻き込まれたくない



そう言っているように聞こえた





色んな悲しみが渦巻いた
ひとりで、心を整理したくて屋根上へ



しばらくすると吉村が隣に座った




「稽古つけて下さい
俺、もっと強くなりたい!
ちゃんと山南副長を視てたら…
こんなことには…
山崎さん!よろしくお願いします!!」


「吉村」


「はい」


「お前のせいじゃない
それと、しばらく稽古しない」


「どうして!?」


「屯所が移転するから」


「え?決まったんですか?」


「すぐに決まるはずだ」


「わかりました」


「忙しくなるから、気合い入れとけよ」


「はい」


「あと、敬語なし!」


「あ」


「クスクス 吉村、新選組に来てくれて
ありがとうな
吉村がいなかったら、俺は…
山南副長の後を追ったかもしれない」




勇の心が遠くに行った
実際は、近くにいる伊東さんのところ



でも、勇の心は、俺を避けている



巻き添えになりたくない



そう言っている




慶喜のところで失ったものより
勇と新選組で得たものが多かった




それだけに、辛い





また、失っていくのかと














月明かりを求めて屋根上に来たが

雲に隠れて辺りは真っ暗だった





この感覚は、何度も味わった






闇に落ちる














< 89 / 264 >

この作品をシェア

pagetop