セルトリア学園
「どうしたの?」



女の子が発した声はほんとに可愛らしく、
可愛い物好きとしては今すぐ抱きしめて
頬擦りしたいがそれをすると
嫌われそうなのでぐっとこらえる。



自分の気持ちと格闘していると
女の子がまたクイっと服を引っ張る。



「大丈夫?」



「へ?」



「困って、ない?」



「あ!困ってる!すごく大変」



そう言って苦笑すると女の子がんっと頷く。



もー、それだけで可愛くて
今すぐ抱きしめたくなってしまう。



私が首を傾げていると
女の子が私の前に出てピンと胸を張って前を向く。



「着いてきて。道、教える」



「え?あ、うん!」



女の子が一歩前に出ると
なんだか人が割れていくみたいに
簡単にスルスルと歩いて行ける。



それが当たり前のように女の子は歩いていく。
たまに私の方を振り返り着いてきているか、
早くないかなどを確かめているようだ。



私が頑張ってついていくがまた転びそうになる。



「頑張れ」



「え?」



静かに呟かれたそれはなんのことか分からず
聞き返すが女の子はプイッと
進行方向を向いてしまう。



「試験の時間、終わっちゃう」



「あ!本当だ!やばい!!」


女の子に言われて急いで真後ろにつくと
少し歩きやすくなる。



「え〜っと、ねぇ?」



「なに?」



「名前は?私セナ!」



キョトンとした顔をする女の子はほんと可愛く
いやーん!となってしまう。



しかしそれを顔に出さないように頑張りながら
女の子を名前を聞くため自分から名乗る。



女の子は空を向いて顎に手を添える。



「ん、セ、ナ。よし、覚えた」


どうやら名前を聞かれるのは嫌ではないようで、
しかも名前を覚えるために
唸ってくれていたようだ。

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