キラキラしている人がいる


しばらくぼーっとしていると、教室のドアが開いた。



「え、あれ!?」


続いて大きな声がした。

ここ2,3日でよく耳にするようになった明るい声。

教室でたくさんの人が話しをしていても、勝手に耳が拾うようになってしまった声。



小林だ。





「な、なんでここにいるの?」


「寝てた。」


「え、ずっと?」


「うん。」


「ぶ、部活は?」


「休む。」




普通に会話を続けてしまっていた。


小林と話していると落ち着く自分がいる。



自分から突き放したくせに、小林と話がしたくて仕方なかったみたいだ。




「じゃあ、もしかして土井に会ってない?」




その一言で、今日一番の大きな痛みが俺を突き刺した。



やっぱり土井か。

中学の同級生だもんな。仲良さそうだしな。




「…会ってない。」



視線をそらしてしまったのは、せめてもの自己防衛か。


キラキラしていない小林は俺のことを突き刺すばかりだから、直接その刃を受け止めるのは嫌だ。





「うあー!失敗した!」



俺の返事を聞いて、小林が頭を抱える。


駐輪場で自転車を倒した時も頭抱えてたなこいつ。





「なんで部活行かないの?!」



「…小林には関係ないだろ。」




責めるような口調に、思わず冷たく返してしまった。





「……そ、れもそうだ。うん。ごめん。」





大きな声で叫んで頭を抱えていたのと同一人物か疑うレベルで、小さな小さな声で下を向いてしまった小林。


そんな声を出さないでほしい。

心配になる。





「ごめん。あたし、部活の途中だったんだ。行かなきゃ…」





いつだって顔を見て話してくれる小林が目を見てくれない。



初めにそらしたのは俺なのに、それがとても嫌なことだと思ってしまった。



小林も俺と同じように嫌な思いをしたのだろうか。





「小林。」


「…な、何?」


「顔、上げて。」



「ちょっと、それはできないわ。ごめん。」


「なんで。」



「部活、行かなきゃ…」




下を向いたままドアの方に歩きだした小林の腕をつかむ。


小林の様子がおかしい。




「待って。」




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