【短編】泣き顔記念日


そういえば。


今日の七瀬はいつもと違って倍可愛かった。


スカートはいつもよりほんの少し短かったし、リップも新しくなっていた。


髪もハーフアップで後れ毛がまた可愛くて、


弁当のおかずは少なかったし、6時間目はずっとピーチ味の飴を隠れて舐めていた。



嫌な予感は、だんだん確信へと変わっていった。



きっと、



今日、彼女はあいつに告白するんだと思う。



僕は幼なじみで、「やめて」とか「行かないでとか」引き止める権利なんてない。



七瀬が豊田のためにしたように、髪型を変えたり、仕草を可愛くしてみたり、そういう相手を振り向かそうなんて努力をしなかった僕が、今更彼女とどうにかなろうなんて、図々しいんだ。



< 12 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop