【短編】泣き顔記念日
そういえば。
今日の七瀬はいつもと違って倍可愛かった。
スカートはいつもよりほんの少し短かったし、リップも新しくなっていた。
髪もハーフアップで後れ毛がまた可愛くて、
弁当のおかずは少なかったし、6時間目はずっとピーチ味の飴を隠れて舐めていた。
嫌な予感は、だんだん確信へと変わっていった。
きっと、
今日、彼女はあいつに告白するんだと思う。
僕は幼なじみで、「やめて」とか「行かないでとか」引き止める権利なんてない。
七瀬が豊田のためにしたように、髪型を変えたり、仕草を可愛くしてみたり、そういう相手を振り向かそうなんて努力をしなかった僕が、今更彼女とどうにかなろうなんて、図々しいんだ。