東京恋愛専科~または恋は言ってみりゃボディブロー~
「水族館、楽しみですね」

そう言った副社長の顔は子供のように笑っていた。

「はい、そうですね」

私が返事をしたことを確認すると、
「お昼ご飯、どうぞ」

副社長が言ったので、私は食べかけのクロワッサンを口に入れた。

クロワッサンは冷めてしまっていたけれど、美味しいことには変わりはなかった。

ふと、私はあることに気づいた。

――そうだ、デートをするのは今回が初めてだ

大学3年生の頃につきあっていた彼氏とはデートらしいデートをしていなかったことを思い出した。

そんなことに気づいたとたん、私の心臓がドキドキ…と早鐘を打ち始めた。

約束の土曜日はまだ先だけれど、躰は緊張に包まれていた。

マズい、今から緊張してどうするんだ…。
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