きみは宇宙でいちばんかわいい


かわりに、文化祭をきっかけにして交友関係がいっきに広がった彩芭くんには、つねに、たくさんの噂話が付きまとうようになった。


誰かに告白されただとか、誰かデートをしただとか。

つきあいだしたらしい、とか、キスしていたらしい、とか、そういうのも、ちょこちょこ耳にしたことがある。


相手の名前は、基本的に女の子だけれど、たまに、男の子のものになることもあった。

先のミスコンがあって、性別など関係なく、彩芭くんに恋をしてしまう男子というのも、けっこういたみたい。


彩芭くんは、恋愛対象は異性だけだと言っていたものの、同性からの誘いにも気軽に応じるらしいという、シャボン玉くらいの儚い噂も、少しだけ聞いた。



――そのすべてについての真偽を、わたしはいま、なにひとつとして知らないでいる。

それは、わたしが、これまでとは違う場所から久遠彩芭くんを見ていることの、なによりもの証拠なのだと思う。


ここは、彼が構築する世界の、ずっと外側だ。

以前と比べれば、きっと、うんと遠い場所だ。


そして、その分、彼の全貌を見渡せるところでもあるということを、だんだん実感するようになっていった。

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