きみは宇宙でいちばんかわいい


「久遠って、最近、木原さんにかまうのやめたの?」


周囲のことを言えば、文化祭のあと、見るからに関係性の変わったわたしたちについて、そんなふうにストレートに訊ねてくる人というのは、もちろん少なくなかった。

客観的に見ると、彩芭くんがわたしにかまっていた印象が強かったようで、それを聞かれる比率は、わたしでなく、やはり圧倒的に彩芭くんのほうが多かった。


だけど、そういう人たちに対しても、彼は、一度も嫌な顔をしたりせず。


「うん。やめたっていうか、きなこちゃんには、ふられたんだよね」


それどころか、いつも決まって、あっけらかんと、そう答えつづけた。


本当に、誰に対しても同じせりふを返すし、
誰がいようといなかろうと関係なく、とても簡単に言う。

おかげで、それはいっきに学校中を駆け巡るゴシップとなり、そして、波が寄せた勢いのまま引いていくように、そんな話は、いつのまにか消えてなくなっていた。


彩芭くんがあまりにも軽くしゃべるものだから、単なるジョークとして捉えて、まじめに取り合う人が少なかったのも、その一因だったかもしれない。

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