きみは宇宙でいちばんかわいい
「あのね、彩芭くんは、世界でいちばんかっこいいよ」
そんなわけで、いい気になり、もういちど言ってみたのがいけなかった。
彩芭くんはというと、今度は、余裕そうに笑っただけである。
「じゃあ、なな子は、宇宙でいちばんかわいいよ」
こんなの完全に、わたしの負けだ。
ちょっと悔しくて、なんだか恥ずかしくて、口をとがらせながらぶうたれているわたしを見て、彩芭くんが楽しそうに声を上げて笑った。
「なあ、きなこちゃん。キスしていい?」
「えっ、いきなり? ……いま、ここで?」
「うん」
さすがに困惑してしまうと、突然、なにかにふわりと視界を奪われた。
彩芭くんが、首に巻いていた真っ白のマフラーをほどき、わたしたちの頭をすっぽり覆うように、上からかぶせたのだ。
「これなら、誰にも見えないよ」
いっさいの混じりけのない、純白の世界のなか。
鼻先をくっつけて、指先を繋いで、
どちらからともなく、何度もくちびるを重ねた。
これまですれ違っていた分の時間を、埋めるみたいに。
これからやって来る別れの瞬間を、惜しむみたいに。