170回、好きだと言ったら。
その言葉に目を見開くと、頭をかいた佐久間さんが「せやけど」と言葉を繋げた。
「…最期の日、あの時は笑ってへんかった。
アンタが駆けつけるまで、アイツは意識があったんや」
お兄ちゃんが亡くなった日、あたしは学校に行っていたため、病院までかなり時間がかかってしまったのだ。
だから、あたしが病院に着いたときにはお兄ちゃんは亡くなったと聞かされて。
最期を見届けてあげることは叶わなかった。
その日を思い出すと、また涙が溢れた。
「泣かせたくはなかったんやけど…、アイツな言うとってん。
《妹の泣く姿は見なくてよかったけど、最期に笑顔が見れなくて残念》って。
ほんま…どこまで妹好きやねんって思うわ」
「……あたしも、お兄ちゃんに負けないくらい、お兄ちゃんが大好きですから」
「何や、両思いやん。勝ち目ないなーアイツ」
「…アイツ?」
「こっちの話や」
へらりと笑った佐久間さん。
あたしが首を傾げると、不意に携帯の着信音が部屋中に響いた。