170回、好きだと言ったら。



《只今電波の届かないところにいるか……》


最近では聞き慣れてしまったアナウンスを聞いて、あたしは小さく息を吸って吐いた。


「もしもし、テルくん…あのね―」


この言葉を言えば、テルくんは解放される。
弱いあたしを守る為にいつも傍にいてくれたテルくん。

だけど、テルくんだって気づいていた。
暴走族の頭に立っている時点で、いつも狙われていることを。身近にいる人が巻き込まれることだって。


それを知っていた上で、あたしはテルくんの傍にいたかった。


思い返せば、テルくんは最近になってお兄ちゃんのように写真を撮り始めた。

ううん…、多分お兄ちゃんが死んでしまった去年からだろう。


どうしてそんなに思い出を残そうとするの?
テルくんもお兄ちゃんと同じ様に―、死んでしまうから…?

< 164 / 284 >

この作品をシェア

pagetop