170回、好きだと言ったら。
はーと小さく息を吐いて俺は実衣を呼んだ。
背中にあった温もりがそっと離れたのを見て実衣が顔を上げたのであろうことに気づく。
俺はゆっくりと口を開いて、絶対に風の音やバイクのエンジン音のせいで聞こえないだろうと思いつつ、頬を緩ませていた。
「お前のせいじゃない。だから泣くなよ、俺が傍にいるだろ」
「え? 何て言ったの、テルくん…?」
ぼそりと実衣が聞き返した。
絶対に二度と言ってやらねぇけどな。
…傍にいれない可能性がある、なんてもう考えない。実衣を最後まで笑わせることが、俺の幼い頃に決めた目標だ。
だから、笑っとけよ実衣は。そんで俺を病気から救ってくれよ、バーカ。