押したらダメだよ、死んじゃうよ

前を向き直ったわたしの横顔に男の視線が突き刺さる。
わたしは自分がどんな表現をしてるのかもわからないまま、ただ眼下の夜景を眺める。

どうして今更、こんな気分になるんだろう。
どうして今更―――、


「楽しいことなんて、なにもない。」


泣きたく、なるんだろう。

涙なら枯れるほど流したのに。
もう飽きるくらい泣いたのに。

何度も何度も布団に包まりながら、来る朝に震えながら、漠然とした不安に覆い尽くされそうになりながら、泣いた。

くしゃっと顔を歪めるわたしの横で男が「うーん。」と唸る。
そして続けざまに、


「それはさ、下手くそだからじゃない?」


あっけらかんとそう言い放った。


「下手くそ……?」

「うん。楽しむのが下手くそだからじゃない?」

「……。」

「今だって、君はちっとも楽しそうじゃない。自分で望んでそこに立ってるのに。今から君は望んだものを手に出来るんだから、笑ったら? ずっと欲しかったもんなんでしょ? 人生を捨ててまで手に入れたいものなんでしょ?」


そう―――じゃない。
そんなんじゃない。
死にたいわけじゃない。
生きるよりは死んだ方がマシってだけで、
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