私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
いろいろ考えはめぐるけど。
どうしたらいいのか決められないし。
眠れないまま、朝を迎えた。
ああ……どうしよう。
返事しなきゃ。
結婚しませんって言ったらどうなるのかな。
受け取ったお金返せっていうのかな。
それだけならいいけど。
逃げても無駄だって言ってたな。
何されるんだろう私。
それだけでも、弟の智也に聞いておけばよかった。
こういうことは、法律家志望の弟君の方がまともに考えてくれるだろう。
お昼にでも、智也に電話しておくか。
なんて考えて布団に包まって、まどろんでいた。
目をつむったと思ったら、いきなり電話で起こされた。
――杉原奈央さんですか?
と言われたから、違いますと言ってもう一度、布団に入った。
それでも、また電話をかけて来る。
「何ですか、もう」
せっかく考えてるのに、邪魔しないで欲しい。
――怪しいものではありません。株式会社岩槻の秘書です
と相手は名乗った。
外でお待ちしてますから、支度をして出て来て下さいと言った。
「なんで外に出なくちゃいけないのよ」
――それなら、お部屋に伺っても大丈夫ですか?
「やだ」
何がゆっくり考えろだ。
土日挟んで、3日じゃないの。
向こうの言いなりになるものかと、電話を切って無視してみた。
でも、無駄だった。すぐにかけ直して来る。
しつこく、何度も。
私をどうにかして連れ出したいみたいだ。
お待ちしてますの一点張りで、らちが明かない。
どこに連れて行くのか分からないけれど。
仕方がない。顔だけ見せるか。
わざわざ来てくれてるんだし。
念のため。会社に電話をかけて、留守番電話に具合が悪くて休むと連絡を入れた。
時刻は、8時を過ぎたところだった。
私は、その辺に出かけるつもりで適当な服に着替え、自宅を出た。
ロビーから出たところで、背広を着た年配の男性が近づいてきた。
知らない男だった。
「杉原奈央さんですね。朝早くからすみません」とその男に言われた。
頷くと、一緒に来てくださいと言われた。
男は、テレビドラマで見る、刑事が犯人を連行していくシーンみたいに、とめていた車に乗るように言われた。
手錠は嵌められてなかったから、迫力には欠けてるけど。
つまんないことに、車は、十分くらい走ったところでとまった。