私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
取り付く島もない。私は、小さな箱を握りしめて絶望的な気持ちで彼に近づいて行った。

足が震えてまっすぐに歩けない。

せめてこの箱を彼の机に置いて帰るまでは、泣かない。

私、何かしたのかな?

あなたを怒らせるようなこと、何かしたのかな。

何度も訴えようとしたけれど、彼は私を見てはくれない。



もう、私にできることは、
この小さな箱を返して、
ここから立ち去ることだけかも知れない。


箱を返したら、すぐに部屋を出よう。

彼らしい。

大きなテーブルは、気持ちがいいくらいきちんと片付けられている。

彼が見ていた書類が、真ん中に置かれている。


離婚届だった。



紙は折り目が付いているけれど、何も書かれていない。

高陽さんは、もう覚悟を決めているのだ。私は、言葉もなくそれを見つめた。


「用意して待っててくれたのね。それなら、私から言うことは何もないわ」

ポケットから小さな箱を出した。


それをテーブルの上に置くと、
コトっていう音がした。


高陽さんが、その音を聞いてわずかに反応した。


「これ、お返しします。書類なら、今ここでサインしましょうか?」

私も、覚悟を決めた。



彼が離婚を望んでいるのなら、もう反対する術はない。


バッグの中からボールペンを取り出し、用紙に名前を書いた。
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