私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~
私なんで、こんなところでお菓子なんか食べてるんだろう。
ふと、疑問が頭をよぎって、案内してくれた秘書さんにも尋ねてみたけれど、
呼んだのは社長の指示ですからと、それ以上は教えてもらえない。
お菓子を食べ終わってしまったら、他にすることもなくなった。
どうしようかなと思ったところで、
「お帰りになりました」
と秘書の声が漏れて来た。間もなくバタンとドアが開いた。
彼が来た。
途端に、部屋の空気がピンと張りつめる。
姿が見えなくても、一緒にいる秘書さんが自然に姿勢を正すのでわかる。
そのうち人の気配がして、
「よく来てくれたね」と声も聞こえて来た。
張りのある、少し低くて落ち着いた声。
彼は、脅かそうと思ったわけじゃないんだろうけど、聞く人は彼に縛られたように固くなる。
威圧的な感じがした。
関係ない私も、彼の声を聴いたら、じわじわと緊張してきた。
立ちあがって振り返ると、私の従兄、若きプリンス岩槻高陽がこっちに向かって歩いてきた。
「は、はじめまして……」
彼が立ち止まる前に頭を下げる。
「初めましてじゃないよ。
俺は、何度か君を見かけてるからね」
プリンスは明るい声で応じる。
「えっと……」そうでしたっけ?
「一度や二度は、話しかけたと思うけど。
覚えてない?」声に比べて表情は柔らかい。
「すみません」もう一度頭を下げた
「謝ることじゃないさ」