私たち政略結婚しました!~クールな社長と甘い生活~

岩槻高陽が、私の斜め前に座った。

彼は座ったと同時に、顔をこっちに向けて微笑みを浮かべている。

鼻筋の通った端正な顔立ち。意志の強そうな目。

人を引き付ける。彼はきらっきらっとしてる王子様のようだ。

そんな彼に
「久しぶりだね」と声をかけられた。

声をかけられたのはいいんだけど。

この人に笑いかけられると、緊張する。

私は彼と目が合っても、まっすぐ彼のことを見返す勇気はなく、下を向いたり窓の景色を見ていたりしていた。


彼を前にすれば、気後れしてしまうのも仕方のないことだ。

何と言っても岩槻高陽は、一族の中でも特別な存在なのだから。

彼が特別ってことは、親戚筋の端っこにいる私にでさえ耳にしている。

見た通り、頭の良さだけでなく、容姿も飛びぬけていて、立ち振る舞いも洗練されている。

まだ若いというのに、一族のうるさ方の老人たちからも信頼され、すでにグループ内の会社を任されて経営に携わっている。

近い将来グループのトップにつく人。

親戚関係にあったとしても、私とは、近寄りがたいほど距離がある人なのだ。

その岩槻高陽が、腕組をしながらこっちをじっくり見てる。

なぜ?

何で私のことなんか、じっと見てるの?
どうかしましたか?

それよりも、どうして、
こんなところに私を呼び出したの?

彼の方こそ忙しいはずなのに。

そんなにじっくり見ないでください。

確か分刻みのスケジュールを
こなしてるって雑誌に書いてあったもの。

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